在宅介護しながらウィーンへ行く(行った)ブログ 猫とビターチョコレート

40代独身、介護離職してお金はないけど、車椅子の母を連れてウィーンへ行きました。
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片腕のバイオリニスト

三田ユース・オーケストラのコンサート当日。
2人バイオリンが世に出る瞬間がやってきた(大げさか)。
小さな町の小さな市民センターの小さなホールが私たちの舞台。

開演前
(本番直前の舞台)

舞台上には譜面台と椅子がセットされている。
写真の左端が私たちの位置。
椅子の上には私の作った「バイオリン支え器」が置いてある。

白のブラウスと黒のパンツに着替え。
トイレを済ませ。
控室でチューニングをしてもらったら。
予鈴が鳴る。
いよいよ本番だ。

セッティングに時間がかかるので、ほとんど一番に入場させてもらった。
支え器を母の膝に置く。
バイリンをその上に乗せてアゴで挟む。
これが難しくてなかなか位置が決まらない時がある。
 「ちゃんと入った」
母が言った。

指揮者が登場し、指揮台にのぼる。
白いタクトをさっと構えた。
母も、他のみんなもいっせいに、弓を構えた。
息を詰める。
時が止まる。

タクトが下りる。
シベリウス『祝祭アンダンテ』第一音。
やわらかく澄んだ和音が響きわたった。

いつもそうなのだけど、この最初の一音で私の脳裏にはフィンランドの雪景色が浮かぶ。
まるで大自然の中で弾いている気持ちになる。
雪原に朝日がのぼっていく光景。
曲を弾くとか音楽をつくるとかじゃなくて。
音楽の中に入っていく。
シベリウスが描いた美しい絵の中に入っていく。
そんな感じがする。

もちろん現実には、楽譜を追いながら、指揮を見ながら、母の動きに合わせるのに必死だ。
今日の母はすごかった。
一音も間違えず。
一度も止まらず。
なめらかに、そして潔く弾いた。
普段の演奏からは考えられないほどダイナミックに弓が走った。
それは優しくも勇敢な、なつかしい母のバイオリンだった。

片腕のバイオリニスト
(控室で最後の調整をする母。手前の腕は私)

弾きながらいろいろなことを思い出していた。
3年前、脳出血から意識を取り戻したばかりの母が
 「私もうバイオリン弾けないかもしれない」
と泣いていたこと。
PTの先生にいわれて病室にバイオリンを持っていき、2人で初めて「きらきら星」を弾いたこと。
半側空間無視のせいで楽譜がぜんぜん読めなかったから、音符を読むところから練習をしたこと。
バイオリン支え器を何度も何度も作りなおしたこと。
最初はなかなか息が合わなかったこと。
初めてみんなと合わせたときにはボロボロだったこと。

そりゃまあ、今でもそんなに巧くはないし、ビブラートだってできない。
けどさあ、弾いてるよ!
おかあさんバイオリン弾いてるよ!
片手のバイオリニストなんて、きっと日本でおかあさんだけだよ!
そう思うと嬉しくなっちゃって、最後の数小節はニマニマ笑ってしまった。

介護はつらいもので、つらいのが介護だというのなら。
これって介護じゃないよね。
自己満足だよね。
ウィーン行って、バイオリン弾いて。
2016年の夏は最高に楽しかった!

母はノリにノッて演奏をつづけ、あまりに頑張って弾くものだから、バイオリンが動きそうになってやばかった。
フォルテ!
フォルテ!
最後の和音、そしてラストの四分音符!

静寂が訪れる。

私と母は顔を見あわせた。
終わったね。
終わっちゃったね。
うまく弾けたね。
よかったね。

そのあと司会のアナウンスで曲紹介がある。
ついでに私たちのことが紹介された。
片手ずつ2人で1台のバイオリンを弾いているということが説明されて
 「音楽への情熱を失わない演奏者に惜しみない拍手を」
と、たくさんの拍手をもらった。
ただ残念ながら、客席からはあんまり見えなかったらしい。
でも、いいんだ。
私たちはただ私たちのために弾いたのだから。

弾き終わって客席へ戻ると。
2つの花束が届いていた。
ひとつは友人から母に。
もうひとつは、なんと、私にだった!

花束

バイオリンを弾いてお花をもらうのって初めての経験なんだけど。
超うれしいものなんだね。
添えられたメッセージには
 「もう一本の腕へ」
と書かれていた。
もう一回言う。
超うれしい!!
その言葉で初めて気づいたことがある。
私は
 「片腕のバイオリニストなんて、きっと日本で一人だけだよ!」 
と思っていたけれど、実は一人じゃなかった。
母だけじゃなかった。
私もまた、左手だけで弾く「片腕のバイオリニスト」だったんだ。あらまあ。

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5分半の演奏をし、そのあとは客席でコンサートを最後まで聴いて、私たちは家に帰った。
打ち上げには参加するつもりだったけど母の体力がもたなかった。
オケのみなさん、エキストラの皆さん、ありがとう。
指揮者の先生、ありがとう。
私たちに弾かせてくれてありがとう。
そう言いたかったんだけどな。

そういえば小学生の生徒がこんなことを言っていたそうだ。
 「タカハタ先生はすごいんだよ!
 機械をつかって片手だけでバイオリンを弾いてるの!
 バイオリンを弾く機械だよ!」
うん…。
まあ…。
いっか…。


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最後の練習

母と私は、明日、コンサートに参加する。
「2人バイオリン」で演奏をする。

今日は最後の練習だった。
舞台上での練習だ。
私たちは、ファーストバイオリンの端っこ、ビオラの後ろに場所を作ってもらった。
母はちゃんと弾いていた。
弓のアップダウンは間違うし、ときどきテンポがズレちゃったけど、それでも目立つほどではなかった。
ちょっと前まで楽譜も読めなかったことを考えるとすごいと思う。

母はこの先も2人バイオリンを続けるかどうかはわからない。
明日が最後になるかもしれないし、ならないかもしれない。
おだてられたらきっと調子にのるだろうけど、音楽は、誰かのために弾くよりも、まず自分自身が音を楽しむものだから。
母が心から楽しめないのなら、それは仕方がない。
だから。
最後かもしれないから。
たった一曲、たった5分の曲だけど。
大切に弾こうと思う。

本当は開演前にもリハーサルがあるのだけれど、母は体力がないので、明日は本番の一発勝負に挑みます。
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一番心配なのはセッティングです。
席についてからバイオリンを構えるのにかなりの時間がかかってしまう…。
うまくいきますように!


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外出中、車椅子のタイヤがはずれた!

昨日のこと。
母の車椅子を押していたら
 「何かが引っかかってる」
と母が言った。
がた、がた、がた、と車椅子が揺れる。
なんだろう?
と、立ち止まろうとした瞬間。

がたん!

軽い衝撃がきて、車椅子のタイヤがはずれた。
右の後輪、タイヤのゴム部分がぐるりとはずれて、ホイールがむきだしになってしまっている。
 「わっ!」
思わず声が出た。
これでは車椅子が動かない!
よりによって、屋外で。
今日はめちゃくちゃ暑いのに!

この車椅子に使われているのはノーパンクタイヤだ。
 「絶対にパンクしないから安心です」
と業者さんは言ってたけど、ぜんぜん安心じゃないやん!

ぐいぐい押しこんでみたら一時的にゴムとホイールを合体させることができたが、つなぎ目が劣化しているのか、私の押し込み方が悪かったのか、家に着くまでに2回も分解した。

でも幸い、もう帰り道で、車まで数メートルの距離だったから助かった。
そのうえ我が家にはもう一台車椅子があるので、帰宅後はそれでなんとかなった。

すぐに福祉用具の業者さんに連絡をしたけど、新しい車椅子が届いたのは翌日の昼だった。
もしも予備の車椅子がなければ、どうなっていただろう?
母はトイレにも行けなかったはずだ。
ずーっとベッドで過ごさなければならなかっただろう。

私は車椅子だけでなく、介護サービスもいろいろと「予備」を用意している。
ヘルパーさんも、デイサービスも、ショートステイも、複数の事業所と契約している(ほとんど利用していないところもある)。
こんなにいらないかなあと考えてたけど。
予備ってやっぱり必要だ…。

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本日の猫写真。

しっぽであそぶ

こうるさいシシィを、しっぽで遊ばせるサンジ。
子守がだんだんと上手になってきました。


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