在宅介護しながらウィーンへ行く(行った)ブログ 猫とビターチョコレート

40代独身、介護離職してお金はないけど、車椅子の母を連れてウィーンへ行きました。
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シベリウスが懐かしい理由

母と私の「2人バイオリン」で、2度目のコンサートに参加してきた。
このあいだと同じオケで同じ曲を弾くのだけれど。
舞台が大きい。
キャパ1000人近いホールで行われた。

客席が埋まっているのをみるとちょっと緊張したけれど、慣れ親しんだシベリウスを弾くのもこれが最後だ。
前回と同じように完璧な演奏をするまでだと私は思った。
…が、母が何を思ったのかはちょっと分からない。
脳みその調子が今ひとつだったんだろう。
指揮者が登壇したとたん、母は弓をその場に置いてしまった。
おかーさん!
なにしてるの!
弓持って、弓!
 「え?」
今この瞬間にもタクトが振り下ろされようとしているのに、母はぜんぜんわかっていない様子。
 「早く弓持ってー!」
バイオリンを母の顎に押し込む。
指揮者の先生は私たちが体勢を整えるまで待ってくれた。

冷や汗をかいたが演奏はなんとかなった。
たいしたミスもしなかった。
母は大きく弓を弾き、大きなホールに私たちの『祝祭アンダンテ』はよく響いた。
本当にきれいな曲だと、また思った。

バイオリン
(母が片手で音合わせできるようにアジャスターをつけ、私が横から弦を押さえる目安にシールを貼った)

初めてこの曲を聴いたとき、初めてなのに「懐かしい」と感じた。
日本ではマイナーな曲なのに「よく知ってる」と感じた。
 「そうだ、この曲だ」
と。
デ・ジャ・ブというのかな。
ひとめぼれ、かな。
この曲でなかったら、私はこんなにも2人バイオリンに力を入れなかっただろう。

どうしてこの曲がこんなに懐かしいのか。
わからないけれど。
ちょっと想像したことがある。

2人バイオリンはもともとリハビリとして始めた。
でも2人で1台のバイオリンを弾くことは、普段の介護や介助とはまったく違う。
母が右手で、私が左手。
ただそれだけの関係。
対等の関係だ。

排せつ介助をすれば母は
 「汚いことさせてごめんね」
と謝るし、食事介助をすれば
 「ありがとう」
といってくれる。
それは介助者として助かることだ。
でも、2人バイオリンにはそういうのはいらないんだ。
ありがとうも、ごめんねも、いらない。
右手と左手の関係だから。
対等だからだ。
この3年間、私と母はいつも一緒にくっつくようにして暮らしてきたけれど、こんなにも密接に、こんなにも対等に、何かをしたのは初めてだと気がついた。
そしてそれは、とてつもなく幸せなことだということにも。

だが幸せな日々はいつかは終わる。
いつか介護がしんどくなったとき、そして介護が終わるとき、私はきっと思い出すだろう。
ウィーンの思い出と共に、シベリウスの『祝祭アンダンテ』をきっと思い出すだろう。
あの頃は楽しかったね。
幸せだったね。
そういって微笑みながら思い返す瞬間こそが今なのだ。

だから、想像しちゃったんだ。
この曲に胸が熱くなるほどの懐かしさを覚え、同時にせつなさを感じるのは、未来の私と母が聴いているせいかもしれないと。
今日の演奏に遠くから耳を澄ませているのかもしれないと。
どんなに悲しくても、いつか必ず、そういう日がくるのだから。

そう思って今日も精一杯、シベリウスを弾き終えた。

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必死

おもちゃに必死すぎて立ち上がるシシィ。
相変わらず、毎朝私の頭をかじって起こしてくれます…。

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-6 Comments

ばーば says...""
こんにちは。
コンサートうまくいって良かったですね!動画があればアップしてほしいです~。
私はモーツァルトとかベートーベンとかショパンとか誰でも知っているような音楽家しかしらないのでシベリウスは初耳でした。
ユーチューブで聞いてみたらほんとに「最初の一音で私の脳裏にはフィンランドの雪景色が浮かぶ。」と書かれていたのと同じような感覚になりました。
2016.09.11 03:57 | URL | #J8TxtOA. [edit]
POTE says..."それはもしかしたら"
前世の記憶に繋がっているのかもしれません。
その時、だださんとお母様は今のような親子ではなかったけれど、曲にまつわるかけがえのない関係にあったのでしょう。
ワタシも一度だけ、遠い砂の異国の遺跡を訪れた時、奇妙な「ただいま。やっと帰って来られた」という感覚が湧き上がってきたことがあります。
不心得で不信心でご先祖さまとかご利益は全然信じない罰当たりなんですけど、言葉では説明のつかない大きな存在の導きと目に見えない愛しい存在はなんとなく信じています。
2016.09.11 10:45 | URL | #.5Qwvuhc [edit]
だだ(たかはたゆきこ) says...">ばーばさん"
かなりギリギリでしたが一応弾けてよかったです。
動画や録音は禁じられていたのでダメでした。
シベリウスは郷土愛的な音楽をつくる人のようで日本でも「フィンランディア」は有名ですが、祝祭アンダンテはマイナーですね。もっと広まればいいなと思います。
2016.09.11 20:47 | URL | #- [edit]
だだ(たかはたゆきこ) says...">POTEさん"
前世ですか~それもロマンチックでいいですね。
母はとくに懐かしい感じはないらしいので、私ひとりが関わっていたのかもしれません。
>遠い砂の異国の遺跡を訪れた時、奇妙な「ただいま。やっと帰って来られた」という感覚が湧き上がってきたことがあります。
これすごい羨ましいです。
私は旅先でそんなふうに感じたことがないので。
そういえば私、占い師に「前世は絞殺された日本人女性」といわれたことがあります。悲しい(笑)。

2016.09.11 20:52 | URL | #- [edit]
ロコ says..."こういう言葉があるのかどうか"
判りませんが、今ふと浮かんできました。PCは変換してくれないけれど、
完奏、おめでとうございます。
やたらにあるものではない一生忘れることはない日、そのひとつとなり
ましたね。
しかし、満員の大ホールでの緊張が「ちょっと」だけのだださん、
すごい。私は、学芸会でド緊張しました(笑)

時空を超えて漂えるというか、この曲はほんとうに切なく懐かしく
私の胸にも響いてきます。


シシイ姫の立ち姿、なんとも言えず愛嬌があって好っきやわ~。
2016.09.12 00:03 | URL | #sFtYLX32 [edit]
だだ(たかはたゆきこ) says...">ロコさん"
完走ならぬ完奏、ありがとうございます!
ロコさんが聴いても懐かしいですか!じゃあ前世は同じ国にいたのかも(笑)
満員の大ホールといってもねえ、私たちはオケに混ざっているだけですし、音を出すのは母の仕事ですし、私は自分の仕事でいっぱいいっぱいだったんです。

シシィは今日も元気に立ち上がっています。
子猫の証ですね。
あんまりやると足腰にはよくないらしいんですが。
2016.09.12 14:39 | URL | #- [edit]

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