在宅介護しながらウィーンへ行く(行った)ブログ 猫とビターチョコレート

40代独身、介護離職してお金はないけど、車椅子の母を連れてウィーンへ行きました。
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左手を失ったバイオリン弾きの悲しみ

東は大雨、西は猛暑。
みなさまご無事ですか?
我が家は、こんな感じです。

でろでろ
(あんまり暑いので、日課の見張りをサボってるサンジ)

母は元気いっぱいです。
今日はバイオリンを抱えてオケの練習に行きました。
演奏会はもう来週なのです。
先週はボロボロだったけど、今日はもうちょっと上手に合わせることができました。

・・・ただ。
母のバイオリンの音は今日はとても小さかった。
普段はもっと音が出るのに。
古めかしい良い声で歌うバイオリンなのに。
最後のほうはなんだか蚊の鳴くような囁き声だった。

どうしたの、どうしてもっと弾かないの、と尋ねても
 「どうしてだろうねえ」
はっきりとは答えてくれない。
けれど、ぽそりと呟いた。
 「みんなと弾くのはこれで最後」
えっ、来年はやらないの?
 「だって無理があるでしょう。難しい曲だって弾けないし」

気にしているのだ、と思った。
いや、気づいてしまった、というべきか。
どう頑張っても以前のようには弾けないことに。
先生であるはずの自分がお荷物になってしまうことに。
これまでは、わずかに残る妄想がカバーしてくれていたのだけど、今日とうとう
 「生徒たちよりもへたくそだ」
ということに気づいてしまった。
だから生徒たちに迷惑をかけないように小さな音で弾いていたのだ。

私はこのことをずっと心配していた。
 「バイオリンを弾くことが一番のリハビリになるはず」
と周囲の人からすすめられるたび、この人たちは想像したことがあるのだろうかと考えていた。
バイオリン弾きにとって、弾けないことがどれほど大きな悲しみかということを。
バイオリンを持つたびに、失ったものの大きさをまざまざと見せつけられるということを。
 「夢のなかでは昔とおんなじように弾けるのよ。目が覚めたときも、今なら弾ける! って思っちゃうの。でも、どうしてもやっぱり左手はちっとも動いてくれないの」
母はとってものうてんきでポジティブだけど、バイオリンに関してだけはそうじゃないんだ。

母は、二人バイオリンでもいいからやりたいという。
少しでも弾けるのは嬉しいから。
音を出すのは楽しいから。
でもこうやってオケに交じって合奏となると…よけいに哀しみが深くなるのかもしれない。

弾くのがつらいなら弾かなくてもいい。
これで最後だというのなら最後にすればいい。
でも、弾くのなら。
弾くのならせいいっぱい弾こう。
へたくそな二人バイオリンなりに、出せる限りの音を出そう。
私たちの歌を歌おう。
シベリウスを歌おう。
大勢で弾くんだから、ちょっとくらい変な音だしても誰も気づかないよ!

・・・明日もまた、練習に行きます。
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今日はバイオリンの生徒だけの練習でしたが、明日は全体練習です。
ちょっと緊張~。

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6 Comments

ばーば says...""
こんにちは。
病気で倒れて後遺症があるにもかかわらず、一生懸命弾く姿は心ある生徒の胸を打つはず。
彼らだって年を取る。将来病気に倒れる子もいるかもしれない。
その時に今のお母様の姿が大きな励ましになるはずです。
上手に弾くことがお母様の使命ではないと思うので頑張っていただきたいです。
2016.08.21 05:20 | URL | #J8TxtOA. [edit]
ロコ says..."想像が及んでいませんでした"
最初の練習参加の記事に際して、これなら先が期待できますね
といったようなことを私は書きました…
忸怩たる思いです。

9年前の転倒事故で大腿と手首を複雑骨折し、高齢もあって
とても活動的だった以前には戻れなくなった長姉の姿と
嘆きを、折に触れ見聞きしているというのに。
鈍感でした。猛省します。
2016.08.21 09:43 | URL | #sFtYLX32 [edit]
だだ(たかはたゆきこ) says...">ばーばさん"
ありがとうございます。
おっしゃる通りだと思います。
私もずっと同じことを思ってここまできました。

ただ、一生懸命な姿は見る人の胸を打つ…けれどそれは見る人の胸であり、弾く人の胸ではありません。
母は一応プロだったので自負心があります。
下手な演奏を聴かれるよりも、以前の美しい演奏を記憶にとどめておいてほしい、という思いもあるのでしょう。
美談は健常者のためにあるもので、障害者本人には必要ないんです…難しいところですよね…。
2016.08.21 22:29 | URL | #- [edit]
だだ(たかはたゆきこ) says...">ロコさん"
いえいえ、私も同じでしたから。
人の心って難しいんですよね。
母はバイオリンを弾きたがっていますし、弾くことは本当に良いリハビリになるはずなんです。
でも一方ではかえって傷つくことになる。
そこを乗り越えるにはやっぱりある程度の「若さ」が必要だと思うんです。
体と同じで心のリカバリーには柔軟性が大事ですよね…。
少し急ぎすぎたのかなと思いつつ、でもやっぱりここまで来たからには弾かせちゃう(笑)。
2016.08.21 23:20 | URL | #- [edit]
ばーば says...""
お返事ありがとうございました。
よくわからないで分かった風なことを書いてごめんなさいね。
自分がその場にいたら以前よりうまくひけていなくてもきっと心の中で応援して勇気をもらうだろうなと思ったのでつい書いてしまいました。
反省しています。
先生をしていらした方はそういう時特にショックや葛藤が大きいと聞いたことがあります。
お母様の心が少しでも楽になりますように。

世界旅行の本持っています。
感心したりびっくりしたりしました。
2016.08.23 11:23 | URL | #J8TxtOA. [edit]
だだ(たかはたゆきこ) says...">ばーばさん"
いいえー!
こちらこそ書き方が悪くてごめんなさい。
先生ってプライドが高いんですね、生徒の手前もあって。
それまで必死に練習をしてきたぶん、どんな理由であれ、できないことが許せない、恥ずかしい、と思ってしまうみたいですね。

旅行の本、読んで頂いてありがとうございます!
あれから世界はすっかり変わってしまいました…。
2016.08.23 20:58 | URL | #- [edit]

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