在宅介護しながらウィーンへ行く(行った)ブログ 猫とビターチョコレート

40代独身、介護離職してお金はないけど、車椅子の母を連れてウィーンへ行きました。
12

「障害をもって生まれてくる子は幸せを招く」と祖母は言った

妹が重い障害をもってうまれてきたとき、祖母はこう言った。

「こういう子は昔から『福子』って言いますのやで。こういう子がいると親はよけいに頑張って働くから、家はそのぶん豊かになる。豊かになって、家族みんな幸せになる。幸福を呼ぶ子なんや」

『福子伝説』だ。
日本はもともと、こんな言い伝えのある優しい国のはずなのに。

相模原の障害者施設が襲撃された事件で考えたことを少しだけ書こうと思う。

この事件の怖さは、無抵抗な弱者が殺されたというだけじゃない。
本当に恐ろしいのはあの言葉だ。
「障害者なんていらない」
という犯人の言葉。
刺激的なセリフだと思われたのだろうか。
ニュースや情報番組ではテロップとして何度も流れた。
私は何度も。
何度も何度も見た。
そのたびに胸がえぐられるような気持ちになった。

私が怖いのは、そう思っているのが犯人ひとりではないかもしれない、ということだ。
凶行に走らせたのは薬だけではない、ということだ。
社会はバリアフリー化がすすんでいるけれども世の中は押し隠した差別心であふれている。
たとえ口に出すことはなくても、こんなに極端でなくても、頭のどこかに心のすみに、殺人鬼と同じ言葉を抱いている人たちはたくさんいるのだろう。
だからこそ、この言葉は衝撃的であり、あんなにも何度もテロップで流されたのかもしれない。

「障害者なんていらない」。
なにも生み出さないから生きる価値がない。
動けもしない人生に意味はない。
犯人はそんなふうなことをほざいていたような気がするけれど。

寝ぼけるんじゃないよ。

生きる価値なんて、誰にもない。
人生に意味なんて、最初からない。
生きる価値も、人生の意味も、見つけだすのはその人自身だ。
価値も意味も自分自身で決めるものだ。
他人が決めるものじゃない。
たとえそれが親兄弟であってもだ。
「生きてたら可哀想だから一緒に死のう」
とか心中しちゃうことがあるけど、そんなもの親が決めるもんじゃない。
どんな人生だろうが重い障害をもっていようが他人が決めていいはずがない。

以前からブログに書いているように、私の妹は生まれつき重い障害をもつ、重度重複障害者だ。
読み書きはもちろん言葉もほとんど話せないし、自分ひとりで座ることすらできないし、スプーンを口に運ぶことも難しい。
紙オムツをつけ、車椅子に座り、生活のすべてを人に頼って生きている。

だけど私の妹は、すてきな笑顔で笑うことができる。
誰よりもいっしょうけんめい歌うことができる。
音楽を愛し。
映画を楽しみ。
アイスコーヒーとドライブが大好き。
友達もいるし、好きな人もいるし、仲の悪い人もいる。
人生を苦しむと同時に楽しむことを知っている。
すべての人と同じように。
あなたと同じように。

母が倒れた3年前から、妹は障害者施設に入所している。
家庭でのW介護は無理だったからだ。
施設の職員さんにはとても感謝している。

入所してからも私たちは毎月一緒に遊ぶし、春には2人で高校野球をみにいったし、昨日だって家族そろってファミレスで食事をした。
入所したって家族は家族。
外国に嫁いだもう一人の妹が今でも家族であるように。
ときどきウザくてときどき可愛い、どちらも私の妹だ。
そんなのあたりまえのこと。

障害者だからいらないなんて言うな!
私の妹をいらないなんて言うな!

一方で、誰かのことを「いらない」なんていう人はきっと、ほかの誰かに「おまえはいらない」といわれたのだろうな、と思う。

にほんブログ村 介護ブログへ
にほんブログ村

少しのつもりがなかなかの長文になってしまった。

気分をかえて、本日の猫写真。
子守を拒否するサンジ君です。

遊びたくない
(右の襖の向こうに子猫がいる)

子猫が家にきてからというもの、サンジは毎日せっせと遊んでやっていたのだけれど。
今日は
 「遊びに行こうよ」
と誘っても
 「やだよ」
といわんばかりに狸寝入りをきめこんでいる。
 「ぼくのこと子守り要員だと思ってない?」
…うん、ちょっと。

関連記事


スポンサードリンク

該当の記事は見つかりませんでした。

12 Comments

J・O says...""
ご無沙汰しております。

泣きながら拝読しました。
だださんが言葉にしてくださったこと、感謝します。
私は当事者ではないから何も言えないかもしれない、でもだからといって黙って発信しないことは許されない…と、昨日から悶々としていました。
(10年ほど前、養護学校(当時)の最重度クラスで2週間だけ、教育実習で介助をさせてもらって、そこで思うところはあるのですが、それだけの経験で何を語れるのか?と)

命の価値を、人生の価値を、他人に決めさせない。
肝に銘じていきたいです。

辛い思いを抱えながら書いてくださってありがとうございました。
猫記事にも毎日癒やされています♪
2016.07.27 23:29 | URL | #- [edit]
世の中に物申す says..."BLOG拝読させていただきました"
はじめまして。
突然のコメントで失礼いたします。
  
「世の中に物申す」というタイトルでBLOGを掲載している者です。
http://blog.goo.ne.jp/pizzica0912/e/be3c444dd24dce8636b99b4433c14954
 
私も同じく日本BLOG村の介護BLOG登録を行っており、他界した父の介護の話や障害を持った猫の話などをBLOGに掲載中の者です。
 
Facebookの友人が、このBLOGへのリンクを貼ってくれたので、このBLOGを知ることが出来ました。
 
これから、少しずつ、過去の記事も読ませていただきたく存じます。
2016.07.28 02:34 | URL | #N0fGSRtA [edit]
ねこママ says...""
お祖母様の「福子伝説」、なんと素敵な方なんでしょう!
素晴らしいご家族に囲まれて育った、だださん、妹さん、幸せです。
昔は良かった、昔の人は偉かった…なんてつい愚痴が出ます💦
2016.07.28 18:07 | URL | #9MM/.TM2 [edit]
だだ(たかはたゆきこ) says...">J・Oさん"
お久しぶりです。
本当に酷い事件ですし、これが社会に及ぼす影響も怖いです。
なによりも被害に遭われた方やご家族はどんなに怖かったことでしょうか。
そしてたくさんの障害のある方たちがどんなにショックを受けて恐ろしい気持ちでいるか、想像すると胸が痛みます。
2016.07.28 21:31 | URL | #- [edit]
だだ(たかはたゆきこ) says...">世の中に物申すさん"
初めまして。
お越しいただきありがとうございます。
長年お父様の介護をされていたのですね。
本当に頭が下がります。
施設も本当に大変な方は受け入れてもらえないという話をよく聞きます。
いろいろと難しいことが多いです…。
2016.07.28 21:57 | URL | #- [edit]
だだ(たかはたゆきこ) says...">ねこママさん"
昔の話にもいろいろあって、日本神話で蛭子神は流されていますし、仏教が入ってきてからは先天性の障害は因果応報だといわれてきました。
弱い者を切り捨てようとする社会というのは、それだけ余裕がなく、衰えてきた証拠なのかなあと思います。
2016.07.28 22:00 | URL | #- [edit]
オール says...""
全ての人間の命は神様から頂いた大切なものです。
人は、人として生きているだけで尊く、価値があるものです。
障害者なんていらない、なんて言えるはずもない酷い暴言です。

実は、私にも病気を抱えた兄がいます。
だださんの妹さんとは全く系統が違う精神障害者ですが。
兄は例の事件にショックを受け「僕はこんな悪いことはしない。」と悲しそうに言ってました。
当たり前だ、君は確かに病気だが良いやつだと励ましましたが、その後も色々悩んでいる様です。
病気持ちですが、大事な兄です。

今回の事件には本当に憤りのみ感じます。
2016.07.29 00:23 | URL | #FvLIUmYM [edit]
ロコ says..."あの事件を知ってから"
だださんのブログ記事を拝読してから、何ともいえない重苦しい
気持を言葉にできずにいました。
理性を欠いた人間の暴力ほど、恐ろしいものはない。

知人に、介護施設の看護師さんと理学療法士さんがいます。
今回の事件は、入所者、お身内、知己はむろんのこと、
みずから選んだ職業に誇りを持っているこの2人も傷つけた
ようです。

あのテロップは、流し過ぎではないかと思いました。
暗い心を持った人間にどう響くkか。
大勢の子供達もTVを観て見ているのです。
2016.07.29 14:22 | URL | #sFtYLX32 [edit]
だだ(たかはたゆきこ) says...">オールさん"
おっしゃるとおりです。
弱い者を助けることは人間の根本的な優しさであり、それを自ら捨てて害する側にまわってしまったら、それはもう人間とは呼べないと思います。
たとえどんな理由があったとしても…。

精神障害の方は身体障碍者とはまた違った差別があり、さらにひどい偏見があると聞いたことがあります。
情報が偏り、十把一絡げにされているせいでしょうか。
報道が弱者をさらに傷つけるのですね。
たくさんの人が動揺していると思います。
お兄様も心配です…。
2016.07.29 20:53 | URL | #- [edit]
だだ(たかはたゆきこ) says...">ロコさん"
たくさんの人を傷つけられたのですね…。
本当に、夏休みの時期なのに。
理性を失って暴力をふるう人間はもはや人間とは呼べません。
戦時中でもないのに、人間の根もとを試すような事件だと思います。
2016.07.29 21:22 | URL | #- [edit]
ありがとうございます says...""
とても救われました。
2018.11.24 01:24 | URL | #- [edit]
だだ(たかはたゆきこ) says..."Re: タイトルなし"
こちらこそ、読んでくださって、そう言ってくださって、嬉しいです。
ありがとうございました。
2018.12.05 22:06 | URL | #- [edit]

Leave a reply






管理者にだけ表示を許可する