思い出の桜
各地で桜が花開き。
テレビでは連日、花見の様子がうつしだされている。
母はもう、うずうずして
「お花見いこうよ!」
ばかり言っている。
無理だよー、ここらへんの桜はまだ蕾なんだから。
「ここらへんじゃなくていいから、行こうよ!」
あんまりうるさいので車で南下した。
桜の咲いてるところまで。
桜の咲いてる。
宝塚だ。
桜の名所は日本各地にある。
でも、ここ宝塚には
みごとな古木や
雲のごとき桜の森や
海や山の美しい借景や
そういうものはひとつもない。
ただ、思い出だけが数えきれないほどにある。
(撮影:母)
昔ここには動物園があって、子どもの頃の定番の遊び場だった。
学校が休みに入ると必ず来てた。
家族みんなで花見をしたことも何度もある。
ファミリーランドがなくなっても
大劇場が建てかえられても
私が子供でなくなっても
母が歩けなくなっても
いろいろなことが変わっても
桜の色は変わらない。
せっかくだから記念写真を撮ろうと思った。
どの木がいいかな?
どこで撮ろうか?
ねえ、お母さん?
「お団子」
と母は言った。
「お花見団子を撮ろうよ」
・・・なんで?
花より団子にもほどがあるけど、母は花見を喜んでいた。
「きれいだねえ、楽しいねえ、懐かしいねえ」
をくりかえしていた。
「ここの桜はやっぱり思い出の桜だね」
お団子に夢中だったけど、母も同じことを思い出していたようだった。
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