怪獣が帰ってくる
母がなんだか元気がない。
珍しいほど黙りこみ。
ときどきぼんやりしたりして。
足が痛いせいだろうか。
それとも風邪でもひいたのか。
と、心配していたけれど。
原因は、思いがけないことだった。
明日がU子(末妹)が帰ってくるねと、私が話しかけた時だ。
母はちょっとため息をついた。
「・・・明日は、大変だね・・・」
そして慌てて
「帰ってきて嬉しいって、言えるようにならないとね」
とつけ加えた。
妹のU子は重度重複障害者。
一年前から施設のお世話になっている。
毎月、外泊という形で帰ってくるたびに、我が家は戦場になる。
妹は、久しぶりの家が嬉しくて、はしゃぎ過ぎてしまうから。
怪獣のような奇声をあげまくってしまうから。
病後、大きな音に弱くなった母には、妹の金切り声がキツいらしい。
我が子なのに。
30年も育ててきたのに。
一緒にいるのがしんどいなんて。
病気になるまでは自分が世話していたけれど、今では何もできなくなって、上の子(私)に二重の負担をかけてしまって。
そんな罪悪感にさいなまれているらしい。
大丈夫だよお母さん、と言ってしまえばウソになる。
私にとってもU子は可愛い妹だし、会えるのは嬉しいんだけど、
それ以上に手に負えなくて、暴れまわるたびに毎回大ゲンカしてしまうから。
それで私も黙りがちになってしまう。
そんなときに
「U子が帰ってきたら、焼肉いこう!」
とオヤジがいいだした。
「U子にも、肉、食わしてやらなな!」
食事介助するのは私なんだけど、と思いながらも焼肉屋に予約を入れた。
「車椅子2台つれて行きますんでよろしく」
と。
・・・ああ。
しんどい仕事がまた増えた。
1クリックで怪獣な妹と闘う勇気をください!
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差し出された傘
天気がよかったので母と2人で散歩に出かけた。
車椅子押して。
ゲオまで歩こう。
ところが、あんなに晴れていた空に、影がさしてきた。
黒い雲がもくもくと湧いてくる。
ぽつり。
ぽつぽつ。
にわか雨だ。
降ってきた。
「急ごう」
母に声をかける。
本降りになる前に店に駆け込もう。
走るぞー!
びゅーん!
が、そんなときに限って赤信号。
くっそー!
信号を睨みつけていると
「はいこれ」
横からヒョイと傘がでてきた。
近所のおばさんだった。
ほとんど話したこともなく、家も知らない程度の顔見知り。
そんなおばさんが
「これ使って。風邪ひいたら大変。返さなくていいから」
と、自分の傘をさしだしてくれた。
嬉しかった。
すごく嬉しかった。
そしてびっくりした。
自分がぬれちゃうのに傘をかしてくれる人がいるなんて。
百均のビニール傘というわけではないし、なかなかできることではないと思う。
でもごめんなさい。
実は、私も、傘、もってるねん・・・。
ぽつぽつ雨やし、店がもう目の前やし、面倒くさかったから、走ってもてん・・・。
だから、ありがとうございます、ありがとうございます、って、お礼をいっぱい繰り返していたら信号が変わった。
私もそういうことができる大人になりたいと思いながら、おばさんとは別れた。
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世界一キタナイ焼き菓子を作ってもた
母が足を傷めた。
片麻痺のため、右足ばかりに負担がかかり、とうとう傷めてしまったようだ。
だが病院へ行くと
「これは指を傷めたのではなく、爪が悪さをしているせいだ」
といわれ、大きな爪切りでチョキン!と切られた。
そしたら今度は深爪になったらしく、痛みはさらにひどくなった。
トイレに行くのも一苦労。
今日は半日、寝て過ごす始末だ。
やれやれ。
明日は治ってるといいなあ・・・。
そんな母の気分転換にと、このあいだ発見した謎のレシピでお菓子を作ってみることにした。
若かりし頃の母が記したレシピ。
でもレシピは生地の作り方だけで終わっている。
肝心の調理法がわからない。
仕方がないから、いろいろ試そう。
油で揚げる。
フライパンで焼く。
オーブンで焼く。
どれが正解なのだろう?
って、いろいろやってるうちに、生地がドロドロに溶けてもた!
なんとか焼いたけど。
これ「キタナイお菓子コンテスト」にでたら優勝間違いないな!
見た目はホンマにひどいけど。
味は問題ない。
謎のレシピの正解は「オーブンで焼く」だったらしい。
クッキーがおいしかった!
森永のムーンライトみたい。
バターをたくさん入れたから、サックサクでした。
母と2人でパクパク食べてしまいました。
「太る!」
「これは太る!」
と口々に言いながら・・・。
明日は10キロ走りましょう。
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